母国語が異なる様々な国の方への日本語教育の習得、長年の日本語教師活動から培ったノウハウ、自らの海外生活での外国語習得、これら全ての経験をもとに、外国人学習者へ最適な授業を展開しています。
全クラスで直接法(日本語を日本語だけで教える方法)を採用
近年、様々な国籍の外国人が、日本国内で働かれています。それに伴い、学習者の母国語も多義に広がっています。そのため、授業は、母国語を介した間接法ではなく、直接法が必至となります。また、世界で最も難しい言語とまで言われている日本語は、四季があることによる表現の豊かさや島国独自の歴史の発展を遂げてきたことを背景に、他の言語と比較しても、語彙の数が非常に多いとも言われています。言葉が織りなすニュアンスの奥深さは、日本で育った者にしか理解できないほどであります。
このように、文法以外の難しさも持ち合わせる日本語を学ぶ学習者にとって、初級レベルから直接法で学ぶことは、中上級レベルへ進んだ際に、日本語独自の言葉のニュアンスを母国語で介さずに考えることができるようになり、とても重要なことなのです。そして、日本人と同じように日本語の本質を理解し、高い会話力を身に付けることに繋がるのです。これは、論理的にも、直接法が重要であることを示し、当教室では、全クラスの学習者へ直接法で教えています。
直接法授業とは具体的にどのような授業なのか
では、日本語が全くわからない外国人へどのように日本語を教えていくのか?日本語教師の勉強をしていない方にとっては、誰もが疑問に感じることだと思います。これに関しては、企業様からもよくご質問をいただきます。
この内容に関しましては、日本語教師の技量に当たる部分なので、詳細は記せませんが、例えば、初級レベルの学習者には、【具象のものから抽象のものへ】と言葉を導いていきます。また、【世界共通の基本概念領域(物・人・動物・所・数・時・自然・事)】や【日本語習得に重要な4つの考え方(具象⇔抽象・客観⇔主観・未知⇔既知・客体⇔主体)】などを使用し、初級から上級レベルまで全ての授業で【日本語の規則性と用法】を落とし込んでいきます。
日本語教育に携わらせていただく企業様へは、最初のお打合せで具体例をお伝えいたします。また、授業開始後は、日本人社員の方の見学のご要望にもお応えしておりますので、ぜひ一度、授業を覗きにいらしてください。
テキストを教えるのではなく、テキストで日本語を教える
現在、日本企業に就職されている多くのアジア系外国人労働者が、自国で日本語能力試験N5(基本的な日本語がある程度理解できる)~N4(基本的な日本語が理解できる)レベルの勉強をして入国されています。国によっては、自国でN3(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができるレベル)に合格して、来られている方もいらっしゃいます。しかし、共通して言えることは、入国したばかりの外国人労働者は、企業側の期待より会話力が低く、多くの企業でコミュニケーション障害を感じられています。これは、自国で勉強してきた内容が、実際には使いこなせていないことを表しています。(日本人の英語力に似ているかもしれません。)また、同じ初級クラスに分けられた学習者でも、実際は、個々のレベルや得意分野・苦手分野は大きく異なります。
そのような、学習者の会話力の低さやクラス内の日本語能力の差を考慮しながら、テキスト選びをしていますが、企業様向けのグループレッスンでは、スリーエーネットワーク『みんなの日本語 初級Ⅰ・Ⅱ』の使用を推奨しています。文法のレベル的には、日本語能力試験N4(基本的な日本語が理解できる)の内容に当たりますが、こちらのテキストは、課ごとに学ぶ内容が明確で、問題や長文のテーマの質も高く、学ぶ側にも、教える側にも、とても優れているテキストです。これから、日本語の勉強を開始する学習者には、もちろん、文法は理解しているものの、日常会話力がまだ低い学習者にも使用できます。
では、どうしてレベルの異なる学習者方へ、この同じテキストを勧めることができるのでしょうか。それは初級レベルの内容が中上級レベルの内容へどのように繋がっていくのかを把握しているからです。プロの日本語教師なら、初級レベルのテキストを統一して使用しても、学習者の能力に合わせて、【導入・理解・定着・応用】に要する時間配分や内容を教師の技量で変えることが可能なのです。
私は、日本語教育は、テキストで導入・理解部分を展開したのち、定着・応用部分は、学習者の環境(職種など)に沿った内容で展開するべきだと考えています。これは、日本語教師の力量となる部分であり、私は、「テキストの日本語」を教えるのではなく、テキストで「学習者が必要とする日本語」を教えています。
語学習得の上達には【INPUT➜OUTPUT】が不可欠
アジア系外国人労働者は、休日は寮やアパートで過ごす方が、とても多く、欧米系の方々が、会社外でも日本語をどんどんOUTPUTされるのに比べ、そのような機会がとても少ないのが、現状です。その反面、既に母国で日本語の文法をきちんと勉強して来日されている方が多いので、授業では、INPUTより、OUTPUT多めの授業展開をしています。
例えば、問答発声では、【教師➜生徒】【生徒➜教師】ではなく、【生徒➜生徒】の展開へと導き、できるだけ、学習者発声を増やす授業をしたり、こちらから指名し、教師の代わりにホワイトボードへの板書をお願いしたりすることも多々あります。後者は、板書でのOUTPUTです。普段よく話せている学習者も、文字にすると、どこかにミスがあることが多く、視覚的効果を利用し、クラス全員で正解を導いていきます。
他にも、回答を順番で答えがちですが、ランダムに指名し、学んだ文法を使い、その場でオリジナル文を作ってもらったりもします。自分だけのオリジナル文を作ることは、文法を忘れにくくする効果があるのです。
また、ときには、日本人社員の方や外部のご見学がある時間は、ご見学者の方々も巻き込んだ授業展開をし、刺激ある印象的な授業展開を行ったりもします。当教室では、常に、OUTPUTを意識した授業を展開しています。
日本語教師がずっと寄り添えるわけではないということ
語学習得は、ゴールがありません。特に、日本語は、外交官が学習する言語別の学習難易度では、最難関のレベル5に位置し、その中でも、最も難易度が高い言語に唯一分類されているそうです。企業様が提供できる日本語教育の時間は、限られています。単に提示し、フレーズを覚えてもらう授業では意味がありません。
教育期間中(日本語教師と一緒に勉強できる期間)、学習者には、【類推力➜応用力➜自学力】を身に付けていただきます。日本語を分析しながらの学び方をすることで、学習者は、これから出会う膨大な言葉も、自分の力で使いこなすことができるようになります。日本語教師の仕事は、日本語を一から十まで教えることではなく、学習者へ【日本語の規則性と用法】を落とし込み、学習者が1人になっても、【自学できる力】を身に付けさせることだと、私は考えています。
限られた授業時間を最大限に活用
教師が寄り添えることのできる授業時間を最大限に活用するために、日ごろから常に教材のことを考えています。導入と理解展開の時間をなるべく短くするために、文型や文法用語などを貼れるカードタイプの教材にし、授業中はテンポよく、スクリーンにどんどん貼付していきます。
生活の様々なシーンを想像できる絵教材も豊富に取り揃えていますし、生活の中の様々なものも教材へと早変わりさせます。例えば、幼児向けの絵本や動物園のパンフレット、某ハンバーガー店のメニューなど、あらゆるものをリアリティーのある教材として使用しています。
テキストで文法や要点を押さえ、テキスト以外の教材で応用力をつける授業展開は、学習者に退屈を感じさせない授業となり、授業終わりには、「先生!またこんなのがしたいです!おねがいします!」とリクエストが出ることも、よくあります。
一番人気は、【すごろくゲームで成文作り】です!すごろくで出た単語を基に、一番長い文章を作った人が勝ちというゲームです。どのレベルのクラスにも、とても人気があり、たいへん盛り上がります。当教室では、長年の豊富な経験から、このような授業展開を数多く、ご提供することができます。
日本語で伝えられること・考えられることの実感を与える
初級レベル後半では、【社会事情展開】を取り入れるようにしています。授業中に自国の歴史・文化・政治について話す時間を設けます。
学習者は、テレビや新聞で日々のニュースを知る機会がほとんどないまま、日本で生活をしていますので、国内外で起きた大きなニュースを話題にし、もし熊本で同じことが起きたら、わたしたちはどうするか?などを日本語で考え、議論します。皆、とても真剣に話を聞きますし、自らの考えを話してきます。
また、学習者間で考えが異なる場合もあり、互いに相手の意見もよく聞いて、考えている様子が伺えます。もちろん、全て日本語です!先に述べた、リアリティーのある教材に加え、当教室では、学習する題材でも、リアリティーあるものを取り入れています。
常に学習者にとってのメリットは何かを考える
日本人と比較しても、海外の方はあまりノートに板書をされません。メモ帳に少しメモを取るくらいの方が、とても多いです。だからと言って、板書をする時間はもったいなく、授業では書くことより話すことを重視していますので、板書することを要求はしません。そこで、学習者がいつでも復習できるように、授業内容を網羅した手作りの手渡し教材を準備しています。
正直、ここまでする教師はいないのではないかと思いますが、私の授業を受けられた学習者全員にプリントを配布し、リモートレッスンの学習者にもデータで配布しています。
授業中には、学習者の話や質問から予定外の展開も数多く板書しますので、授業後はスクリーンの撮影をする学習者も多く見られます。撮影に関しても、自由に許可しています。また、現代は、教師と学習者が様々なツールを使い、データのやり取りが簡単な時代になりましたので、授業中の音読データをお渡ししたりもします。客観的に自分の日本語を聞き、発声矯正に役立てていただいています。
このように、20年間の中で、時代と共に教え方や教材も変化させてきました。当教室では、常に、学習者のメリットを考え、最適なものを提供できるように心がけています。
標準語と熊本弁とどちらを先に教えるべきか
企業様にお伺いすると、エレベータの中などで日本人社員の方から「先生!熊本弁ば、教えなっせ!」などのお言葉をいただきます。実際に、授業中にも学習者から「会社の人やお客様が「よかよか、せんでよかよ」と言いますが、意味がわかりません。」などの質問が出てきます。来日し、関東地方で標準語を学び、仕事をする方と地方で標準語を学び、仕事をする方とでは、大きな違いがあります。では、方言をいつ教えるべきなのでしょうか。
私も、スイスに住んでいた頃、スイスの公用語の一つであるスイスジャーマン(スイスドイツ語)が全くわかりませんでした。しかし、これを習得するためには、まず、ハイジャーマン(ドイツ語)を学び、文法を習得しなければなりませんでした。スイス人からは、「スイスジャーマンはスイスに10年住まなければ、習得できないよ。」とまで言われていました。
方言にも規則性があります。わかりやすい例で言うと、「い形容詞」の語尾「い」を「か」に変えると、熊本弁になります。規則性を教え、「おいしい」➜「おいしか」と提示すると、学習者は、「暑か~」「寒か~」「きつか~」と、まるで熊本人のように、口々に類推した言葉を発します。この程度の簡単なものでしたら、標準語と同時に教えることが可能です。
しかし、「ごめんばってん、きょんの飲み会、おっは、おなかん、痛かけん、行けんけん。」は、どうでしょう?標準語にすると、「すみませんが、今日の飲み会、私は、お腹が痛いから(ので)、行けません(行くことができません)よ。」となります。この文の中には、沢山の日本語の文法が含まれています。
学習者は、まず、この沢山の文法の用法と使い方を学ばなければなりません。応用までできるようになる為には、他の沢山の単語を使い、練習をします。その上で、同時に方言を学ぶ余裕があるでしょうか?このように、方言を学ぶということは、それ以前に、日本語をある程度理解しておく必要があるのです。プロの日本語教師であれば、方言の規則性もすぐに展開することができます。しかし、学習者の学ぶタイミングや理解できるレベルをきちんと見極めた上で、教えています。中級レベルの学習者であれば、熊本弁クラスの開設も可能ですので、ご要望があれば、お受けできます。